最近、ニュースで取り上げられている「就職氷河期世代への支援」との言葉をよく目にするようになりました。
「彼らは努力しなかったのではなく就職したくてもできず、しかたなく非正規として働き、今でも苦しんでいる」と言われています。
若い世代は「努力不足だ、自己責任だ」「就職しなかっただけでは?」と否定的な意見を持っていると思われますが、実際はどうだったのか?
2003年卒で就活をした私の実体験を含めて解説します。
簡単なプロフィール
関関同立と呼ばれている大学群を2003年卒業。
就活では大手企業、数十社すべて面接で落ちる。
やっとの思いで2003年4月中堅証券会社に就職するも毎日の飛込営業と上司の怒号に疲弊し、自己肯定感を失い、逃げるように半年で退社。
半年間フリーター生活をする。
その後、7社転職を繰り返し、現在は医療器機の営業職に従事している。
就職氷河期で一番ひどい2003年はどんな時代?

この時は「失われた10年と」呼ばれていました。
その発端は大手銀行の不良債権の累積額がピークを迎えたことで、経営難となったことです
ニュースでは「金融危機」とよく報道されていました。
また、金融危機が更なる株安と地価下落を招くことになり、
そのため銀行の新規融資が滞り、経済全体が停滞してしまった時代です。
株式市場でも投資心理が極限にまで冷えこみ、バブル後最安値を記録。
今では考えられないですが日経平均が8000円台まで落ちこみました。
株価でみると:東京三菱が300円台、みずほ銀行が100円 旧新日鉄株が100円台 旧いすゞ自動車株が100円割れ、長谷工コーポレーションが20円、大手ゼネコンが100円割れ!
ほぼすべての株価が超特価バーゲンセールだった時代です。
そのため不動産、ゼネコンセクターの資金繰りが顕著に悪化し株価を大幅に落としてしまいました。
今では聞かなくなりましたが「銀行の貸し渋り、貸しはがし」という言葉がはやった時代です。
就職氷河期で一番ひどい2003年は就職できなかったの?
金融危機の不安から設備投資額は落ち込み、コストカットのために新規採用人数は大幅に削減されました。

最近ニュースで氷河期世代が苦しんでいるとよく聞くけど、
本当に就職できなかったの?就職できなくもなかったんでしょう?

どんなにブラックな環境だとしても選ばなければ就職できたかもしれません。大卒の就活でも相当厳しかったです。募集人数が大幅にカットされ、本当に厳しかったです。
有名大卒者でも数十社面接で落ちるのは当たり前でした。夏を過ぎても内定をもらえず、就職活動を余儀なくされた人は今の新卒より断然に多かったと思われます。
大手企業の募集人数は昨年度より大幅に減少し、募集を見送る企業も多数あった時代でした。もちろんコミュ力が高く、優秀な学生は大手の内定を勝ち取っていましたが、その割合は低かったです。
例えばですが、今年就職する学生の募集人数より、来年の募集人数が半数になると考えたら分かりやすいかもしれません。
その他の多くの学生は会社を選んでいられない状況となり、なりふり構わず様々な業種、中小零細企業と片っ端からエントリーし悪戦苦闘していた印象です。有名大卒者でも夏を過ぎでも内定が出ていない人は大勢いました。
高学歴のT大、K大、W大の学生がこんな小さな規模の会社を受けるの?みたいなことは大いにありましたね!
氷河期世代がキャリアを築けなかったのは努力不足なのか?

就職氷河期に甘えて結局は努力が足りなかったのでは?
今更、氷河期世代の支援て言っても自己責任でしょう!

もちろん、全部を時代のせいにするつもりはないです。
ただ、専門卒、高卒の就活生は特に厳しかった状況です。正社員での募集は限られていました。募集している企業があったとしても、現在のように法整備は整っておらず、サービス残業はあたりまえ、最低賃金以下の給料で、労働者の尊厳が守られない企業は多数ありました。最低賃金が700円〜800円前後の時です。現在、よく言われている初任給アップ、第二新卒市場など考えられない時代です。
氷河期世代でなぜ非正規労働者が増えたのか?
考えられる理由として、大手に行けなかった大卒者が中小企業に流れ込み、高卒、専門卒生の就職先を狭めていった印象です。そのため正社員になれず、仕方なくフリーター、派遣社員を選ぶ人が急増したと考えられます。
また、企業が売り手市場だったため低賃金、サービス残業が横行した時期でもあったので、派遣社員の方が新卒より給料がいい会社も多く、自ら非正規を選んだ人も一定数いたのは事実です。
氷河期世代の労働環境はブラックが当たり前!
内定を勝ち取っても、今では考えられないほどのブラック労働に耐えきれず、退職を余儀なくされた人も多数いたのは事実です。
企業側が売り手市場だったため、募集をかければ人数が集まり、労働者は使い捨ての風潮がありました。時給800円でバイトをした方が給料を稼げるなんて当たり前の時代でしたね!
「証券会社では朝6時出社で終電帰りの18時間労働で月20万円程」でしたが土日は休めたのでまだましでした。
例えば先物の営業職や、着物販売、信販会社の取り立て営業、テレアポ企業など仕方なく就職する知人もいましたが労働環境が非常に厳しく病む人は多かったです。
怒号が飛び交う、まずは数百万借金させて社員に着物を買わせる、毎日強めの口調で催促の電話をする、手に電話機をガムテープで縛りつける!
今では漫画の世界で見る様なブラック労働が当たり前だった時代のため、努力不足と自己責任論で片づけられるのは少し切ない時代です。
まとめ
金融危機の影響で、大手企業から中小まで採用人数を大幅に減らしたことが一番厳しいといわれる理由である。その当時は、今以上の学歴社会で大手企業の枠は高学歴者から埋まっていった。
高学歴者でも就職活動に苦戦し中小企業にも人材が流れ込んでいった。そのため就活弱者の受け入れ先がなくなり、仕方なく派遣、フリーターを選んだ人が急増した。
私たちの学生の頃はスマホはなく、動画やオンライン学習などまだ普及していなかった。仕事のノウハウは企業に勤めながら先輩や本から学ぶのが主な時代だったため、個人間の情報格差は今以上に開いていった。
その後リーマンショックが起こり、景気が回復したころにはすでに中堅となっていた。そのため、転職も上手くいかず、劣等感、自己肯定感を持てず、今でも苦しんでいる人が多数いる世代です。
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